第1エリア薬剤師社内研修会の報告

昨年12月3日に長野県薬剤師会にて行われた、後発品使用促進のための研修会に出席した際の報告を元に、後発品についての基礎知識について勉強しました。

はなの木薬局の2月度研修会では、明治薬科大学名誉教授の緒方宏泰先生の
「ジェネリック医薬品を理解するための基礎知識」として講演され、その内容について伝達報告しました。

先発医薬品と後発医薬品とは何か

いわゆる、他社が製造販売する後発医薬品の他に、先発医薬品に対し、処方変更、剤形追加、規格違い品も後発医薬品と同じである。臨床開発中も先発医薬品であっても処方変更、剤形追加、含量変更は行う場合がある。

先発医薬品と後発医薬品を同じ土俵に上げて論ずるべきでない。

先発医薬品は、開発に多額の費用がかかり、発売時は臨床データの不十分である。そのため、開発費用の回収、新たな情報収集のため、患者さんには高い薬価をお願いしている状況である。(先発メーカーの占有の期間、これを第1ステージと呼ぶ)。     その後、再審査期間が終了し物質特許が切れると、物質・臨床の情報は、社会に公表され、社会全体での共有・利用がなされる(社会的財産化、第2ステージと呼ぶ。ジェネリック医薬品の登場)。先発医薬品から、物質、臨床の情報を引き継ぐ条件として、医薬品の有効性・安全性に影響を与える「製剤特性」が同等であることが必要である。この引き継ぐ条件を具備していることが実証されていれば財産(情報)は引き継げる。

後発医薬品を考える視点

特許が切れ、社会的財産となった物質と臨床情報を患者のために有効活用する。先発医薬品と臨床上の有効性、安全性が同等であるという条件で後発医薬品を登場させる。 つまり後発医薬品は、原薬と臨床上の有効性、安全性の情報は社会的財産を有効に利用できるので、有効性、安全性に関わる製剤特性が同等であることを審査すればよい。

安価な開発費で済む → 廉価な薬価 : 後発品の大きな特徴

この社会的財産である医薬品を、臨床上同等として扱える条件を整えて、できるだけ安く患者の元に届ける。これが後発品の開発の大きな目的である。第2ステージの医薬品の考え方は第1ステージ(先発医薬品)とは根本的に異なることを念頭に置かなければならない。医薬品関連情報を後発品メーカーのMRに求めるとコストが高くなる。情報の収集・評価は薬剤師の役目である。後発品メーカーは徹底してコストを下げ、薬価の安い医薬品を提供することが役目。(海外のジェネリックメーカーには、MRがいないところもあるとの話であった)

わが国の薬剤師は、ジェネリック医薬品について医師や患者に客観的な情報を提供できない。薬剤師としての仕事のあり方を考え直す時期にきているのではないか。

先発品と異なる、未知の不純物の存在があるため不安

規格、基準の設定の考え方(不純物の量):臨床上は許容でき、安全性は担保できる範囲内で設定している。臨床上の安全性を余裕を持って確保できればよい。すべての未知物質に関し、構造を決定し、安全性を評価することが必要であろうか?意味もなく、時間と費用をかけることは避けよう。純度試験の規格の範囲内であれば臨床上問題ない。これは先発品も同じ考え方である。公定規格をクリアーしているにもかかわらず、微量に含まれる不純物の違いにより優劣をつけるのはまったく意味のないことである。

後発品に変更した後、体調変化が生じた。これは後発品によるものか?

両者の間に起こる差
= 製剤差 + 病態の変動(進行)によるもの + 季節、食事等の影響 + Placebo + 未知の要因

このなかで、プラセボ効果は予想外に大きいことが、研究結果で報告されている。

先発品と添加物が異なる

先発医薬品も医薬品を変更、処方(添加物)の変更をしている。安定性の向上(有効期限の延長)、剤形変更・追加など。この際、後発品と同様の試験によって、臨床上の同等性を証明している。(先発品と同じ添加物です、という宣伝文句に意味はない)

添加物変更により体調変化が起こる可能性がある → 先発品の処方変更のときも考えていたであろうか?

添加物の種類:公定規格により安全性は担保され、使用経験があり、医薬品の作用に直接影響を与えないと既に確認されたものが使用されている。薬物血中濃度が重なることによって、添加物の影響を含め、有効性・安全性が同等であることは保証される。特異的なアレルギーなどで低頻度発現の副作用の可能性は考えられるが、これは医薬品として許容されており、先発医薬品を含めた注意点である。

ジェネリック医薬品と先発医薬品とが同等なところと異なるところ

同等であるところ:主薬、その不純物が濃度依存的に発現させる「医薬品」としての臨床上の効果、副作用

異なるところ:「医薬品」としての許容範囲の中で、主薬、その不純物、添加物が濃度非依存的に低頻度に発現させる副作用

患者のプラセボ効果による効果・作用の差異が生じる可能性がある。

主薬の臨床上の有効性・安全性に関わらない製剤特性

これらを十分理解した上で、後発品使用をすすめてゆくべきである。

後発品のなかでは、主薬の臨床上の有効性・安全性に関わらない製剤特性を
持っているものもある。

患者さんが飲みやすい、取りやすい製剤(色、形、味、崩壊性、口触り、
分散性 等)

調剤しやすい製剤(調剤機器との相性、調剤条件での安定性、配合変化 等)

これらの製剤開発は後発品として積極的に行うべきである。

先発からジェネリックに切り替えるときには

医薬品としての有効性、安全性は同等である。

不純物、添加物が異なるとき :許容範囲の低頻度の副作用の可能性を考慮する

切り替えて、3 4日の期間は特に観察

感覚的な変化:色、形、飲みやすさ、舌触り、保存性など

また、プラセボ効果を考慮する(効果や作用の変化)。切り替えた直後は要観察

今後、薬局において後発医薬品の使用はさらに進んでゆくと思います。
われわれ薬剤師は、後発医薬品について正しい知識を持ち、患者さんの
ために使用推進を行っていかなければならないと思います。

大桑はなの木薬局  山瀬聡

2010.3.23