岐阜・長野エリア研修会報告 『 パーキンソン病の病態と治療について 』

 今回は、岐阜県中津川市坂下にございます 『 はなの木薬局 坂下店 
の児玉薬剤師が 『パーキンソン病の病態と治療について』 という演題で発表を
してくださいました。

パーキンソン病は、錐体外路機能の異常により引き起こされる病気です。
原因は中脳の黒質神経細胞が減ることにより、そこで産生されるドパミンが減っていき、
相対的に脳内のアセチルコリンの量が上がることで種々の症状が現れてきます。なんと!!10万人に100 150人で発症し、40 70歳に好発するそうです。パーキンソン病の症状としては4つの症状があります。


1 振戦(Tremor)
2 筋固縮(Rigidity)
3 無動(Akinesia)
4 姿勢反射障害(Postural instability)

この4つの頭文字をとってTRAPと呼ばれるそうです。
パーキンソン病の治療は、基本的にはドパミンを補充することで運動機能の改善を図ります。
補助的に抗コリン薬、アマンタジン使います。

代表的な治療薬として・・・    

【レボドパ製剤】
レボドパ単独経口摂取では、末梢でほとんどが分解されてしまうため、カルビドパ、
ベンセラシド(レボドパを分解する酵素を阻害する)を加えた配合剤が使われます。    

【ドパミン受容体刺激薬】
麦角系と非麦角系があります。
麦角系の薬の副作用に突発性睡眠、非麦角系の薬の副作用に心臓弁膜症や
間質性肺炎が起こることがあります。
治療にはまず非麦角系から始め、効果不十分の時に麦角系を使います。
これらの薬は急に止めることで悪性症候群(無動、寡黙、筋固縮、高熱、意識障害
などの症状が現れる)が起こることがあるので注意が必要です。    

【MAO-B阻害薬(モノアミン酸化酵素)】
中枢内でドパミンを分解する酵素を阻害することで、脳内のドパミン量を高めます。
日本ではレボドパとの併用が原則です。副作用には不眠があります。    

【COMT阻害薬(カテコール-O-メチル基転移酵素)】
中枢外でドパミンを分解する酵素を阻害することで、ドパミンの量を増やし脳内への
移行する量を上げます。
こちらもレボドパとの併用で使われます。    

【ドパミン遊離促進薬】
インフルエンザの治療薬として作られましたが、パーキンソン病の運動症状を改善した
ことから使われるようになった薬です。    

【抗コリン薬】
ドパミンが減ることで相対的に多くなっているアセチルコリンの働きをブロックする働きが
あり一番古くから使われている薬です。
アセチルコリンの働きが抑えられると認知機能が低下することがあり、高齢者にはあまり
使われません。    

【ノルアドレナリン前駆体】
ノルアドレナリンの前駆物質であるドロキシドパを投与することで、体内で代謝され
ノルアドレナリンに変わり、パーキンソン病の進行したときに見られるすくみ足、
姿勢維持障害を改善します。    

【レボドパ賦活型パーキンソン病治療薬】
レボドパに他の抗パーキンソン病薬を使用しても十分に効果が得られなかった場合に
レボドパと併用する薬です。
もともとはてんかんの薬で、痙攣発作を偶然に起こしたパーキンソン病患者に投与した
ところ、痙攣が抑えられるだけでなく、パーキンソン病症状の著明な改善が見られたので
使われるようになりました。
作用機序はいくつか推定はされていますが、明確にはわかっていません。

〈発表中の児玉薬剤師〉

カメラを向けると恥ずかしがって、こちらを向いてくれませんでした(>_<)

 

 外科的治療としては・・・
深部脳刺激術(Deep brain stimulation therapy, DBS)があり、脳に適切な電気的
または磁気的刺激を継続的に送りこむことによって、症状の改善を図る治療法だそうです。
患者さまに対するアドバイスしては・・・

1、 勝手に薬を止めない
ほとんどの薬にも言えることですが、今まで飲んでいた薬を急に止めることで現れる
副作用があります。パーキンソン病治療薬では悪性症候群などです。

2、 体を無理のない範囲で動かす
体を動かすのは辛いかもしれませんが、動かさないことで筋力が衰えもっと動かなく
なってしまうかもしれません。

3、適切な食事
便秘を防ぐために、食物繊維を多く摂ってください。タンパク質を少なめに摂ることで、
レボドパの吸収を高めます。

発表は以上でした。

 私が薬をお渡しする機会があるパーキンソン病の患者さまは、新規で薬を始める方は
少なく、すでに罹患しており薬を続けている方が多いように感じます。
長期間の日数で処方されている患者さまも多く、頻繁にお話する機会も少ないですし、
ご高齢ということもあり代理の方が取りに来られることも良くあります。
ですが・・・、もっと知識を深めることで、患者さまやご家族の方の不安解消、治療意欲の
向上につなげることができるよう、がんばっていきたいと思います。

児玉先輩!!ありがとうございました m(__)m

はなの木薬局 坂下店
横井 成尚

2011.1.27